ひつじのにっき

mhidakaのにっきです。たまに長文、気が向いたとき更新。

Android開発者カンファレンス「DroidKaigi」開催にあたって

4月25日に、開発者向けのAndroidカンファレンス「DroidKaigi」を開催します。

- http://droidkaigi.github.io/

今回は責任者として関わってます。このエントリはイベント開催の告知です。開催にあたって何か残しておきたかったので書きました。現在進行形なので諸々いったんまとめておくか、という個人的な気持ちもあります。
またDroidKaigiでは現在、スピーカーを募集中です。ですのでエントリを読んで「スピーカーとして話してみたいな、チャレンジしてみたいな、参加してみたいな」と思ってもらえたら嬉しいです。

開催の目的

ざっくりと一言にまとめると、Android技術情報の共有とコミュニケーションが目的です。

Androidが世に出て6年が経ちました。時が流れるのはほんとうに早いです。もはや革新性というより、現在は定着したプラットフォームとして利用されることが多くなっています。Android WearやAndroid Auto、Android TVなどモバイル以外の分野に適用するべく、機能追加と試行錯誤が行われています*1

Androidの利用シーンは多岐に渡り、一人ではとてもカバーしきれなくなってきました。カンファレンスを通して業界全体で知見を共有し、より良いソフトウェア開発に繋げていきたいです。

開催の経緯

有志のAndroid開発者(個人)が中心となって準備しています。ボランタリーベースで費用面とかは手弁当で進めています。開催のきっかけは、クックパッドさんのpotatotipsという勉強会での雑談でした。勉強会はエンジニアが技術をテーマにはなして知識を共有できる、わりとIT業界独特の習慣だと思います*2

こういう場でのディスカッションは思わぬ発見があることが多くて、Androidをテーマに、開発が持ついろんな疑問、たとえば「どう実装したらいいんだろう」「普段の業務以外の分野を知りたい」「新しい技術の話が聞きたい」「聞いた手法を使ってみたい」が解決できる場を作りたくなった、ということが動機です。DroidKaigiに行けば技術のトレンドがわかる、知りたかったことがわかった、そんなカンファレンスになればいいな、と考えています。

個人的な経緯

個人的には凄く単純で、Androidの技術的なはなしを聞きたいという理由で取り組んでいます。

5年前、TechBoosterというAndroid開発情報のブログをはじめたころは新しい技術としてのAndroidに夢中でした。英語が苦手なのも忘れて(翻訳ツールを片手に)リファレンスを読み漁り、コードを書き、まとめることで好奇心が満たされました。このころAndroidという技術を通して多くの人に出会い、今でも仲良くしてもらっています。

最近では、Androidの商業書籍を執筆したり、ABC2014sでEffectiveAndroid*3トラックとして技術的なセッションを企画してみたり、オープンソースAndroidの教科書を作っていたり*4、同人誌を作ったり*5、とプログラミングに関わることが楽しくて仕方ありません*6

また技術に触れるためには、まとめて発信するという場もどこかに必要で不可欠なプロセスなのだろう、と思うようになりました。少し乱暴ですが、それなら話を聞きたい人が実行委員会を作って運営してみようよ、というわけです。

はじめてイベントに参加したときは少し緊張したことを憶えています。はじめて勉強会で発表するときは不安で、とても時間をかけて準備していました。

今回はじめての開催となるDroidKaigiがどのようなイベントになるかは終わるまで分かりませんが、開発者(スピーカー・一般参加者)が良いプラクティスに触れられる場であればいいな、と思います。またそのために、できるかぎり開かれたカンファレンスでありたいです。

DroidKaigiではスピーカーを募集してます

最後に。DroidKaigiではスピーカーを募集してます。アプリ開発手法、便利なライブラリの使い方、やってみた、なんでも結構です。トピックも一応わけてありますが参考です。応募は重複どんと来い、です。みんなで開発の苦労を共有してみませんか。

興味がでたら是非、下のリンクをクリックして応募してください。

*1:そしてこのようなチャレンジが順風満帆なわけではないのは、みなさんご存じのとおりです

*2:それだけ技術の進歩が早いということかと。楽しい業界です:)

*3:http://d.hatena.ne.jp/hdk_embedded/20131213/1386879188

*4:Android Open Textbookプロジェクト

*5:http://techbooster.github.io/c87/

*6:関係いただいてるみなさま、ありがとうございます

mozilla Open Web Day in Tokyoにいってきたよ

Mozilla Open Web Day in Tokyo

ということで行ってきました。"Mozilla に関係する東西さまざまなコミュニティや研究プロジェクトが集結し、その成果の展示・発表を行う収穫祭的なイベント"らしく、文化祭のような雰囲気。懇親会まであり、たのしかった。

会場も体育館で文化祭っぽかったです。KDDIさんのOpen Web Boardが展示されていたり、大学の研究プロジェクトが展示されていたりと個人や企業だけじゃなくて公的な組織もおおくて意外にアカデミックな側面も。

展示では、Webとハードウェア割り込みをつなげてみたよ

Floppy Bird的なゲームとハードウェアデバイスをくっつけた"Balloon Jamp"の展示をしてきました。

大きなボタンの効果もあり、沢山の人があそんでくれた。よかった。利用デバイスはRaspberry Piとわりとスタンダードなものを選んだのですが、ソフトウェア的には随分とキメラな構成になりました。

このデモでは、巨大なスイッチをGPIO経由で接続、GPIOの割り込みを検出してブラウザにイベントを(なるべく遅延ないように)送ってます。

OSとGPIO制御

OSはRaspbian(2014-09-09-wheezy-raspbian.img)を使用。ほんとはFirefox OSにしたかったのだけど、Raspberry PiはFirefox OSのサポートレベルであるTiar 1〜4(数字が小さいほどパワーをかけてサポートされている)のいずれにも該当せず、完全に野良デバイス。

Raspberry Pi向けのビルドコンフィグはあったのだけどHDMI出力で失敗してました。ざんねん。

./config.sh rpi
./build.sh

ちなみに、ターゲットボードをpandaboardにかえたら起動までは可能。ただし、こちらもやや条件があって、Firefox OS v2.0のブランチをつかってビルドしないといけなかったです。Issueにあるとおり画面(rotation)を90度傾ける問題があったり、マウスポインタが出ないなど実用上の問題があるので、手でpatchをあてます(自動でマージできないぐらいまでソースが進んでる)。

とりあえず今回はRaspbianつかったけど、https://wiki.mozilla.org/Foxberry_Pi_Demo のようにFirefox OSをRaspiむけに移植しようという動きがあるのでしばらくまってるとまともに動くようになるのかもしれません(しかし期待薄)。

Raspbianで、GPIOを制御しようとすると /sys/class/gpioあたりにぶら下がってるのでそのあたりをいじります。

echo  "7"  > /sys/class/gpio/export
echo "out" > /sys/class/gpio/gpio7/direction
echo "1" > /sys/class/gpio/gpio7/value
echo "0" > /sys/class/gpio/gpio7/value

LEDのような単純なデバイスなら、コマンドラインから直感的に点灯/消灯を制御できます。以下のサイトがおもしろい。

あと、こういう直接的な手段以外に、GPIOを制御するためのコマンドもあるよ。

このあたり。インストールすると"gpio"コマンドが生えて、適当に制御できます。今回は未使用でした。

GPIOの割り込み通知

  1. LuaJITでGPIOの状態監視デーモンつくる
  2. GPIOの立ち下り、立ち上がり割り込みを監視
  3. 割り込みで起動したらスイッチイベントを作る
  4. 適当なキーイベントを作成して、LinuxのInput Sub Systemに投げつける
  5. キーイベントとしてブラウザが受け取る

キーイベントは日本語キーにない適当なものを仮想キー扱いでつくったよ。Raspbianのinputイベントは"/dev/input/event0"でした。

./input_key > /dev/input/event0

Cのプログラムでinput eventをゴリゴリつくります。コマンドとして投げます。このあたり興味あれば以下が面白いです。

- http://www.tatapa.org/~takuo/input_subsystem/input_subsystem.html

"Balloon Jamp"では、ブラウザにイベントを届ける、という作業が当初考えていたより手間がかかりました。たぶんもろもろがイレギュラー感あるシーケンスで無理やり達成した感じ。途中思ったのはイベント通知をWebSocket化できればよかった、ということなんだけど、画面更新しまくってブラウザをぶん回しているRaspberry Piさんは、CPU負荷が100%にはりついてしぬほど重い。WebSocketにした瞬間、ゲーム性もろとも死ぬとゴーストが囁いてた。

キーイベントなら取りこぼしもなく、ちゃんと伝わる。すごい(Linuxの歴史を感じる)。

JavaScriptからGPIOを読み取るライブラリはいくつかあったのだけど、ポーリングのような仕組みしか作れず、押してる瞬間に読み取れるとも限らないのでスイッチには対応しきれない感じ。このあたり良いライブラリがあれば良かったのだけど(見落としてなければ)。

非力なCPUや環境でブラウザにハードウェア的なイベントを送るには、という観点で頑張ったら、わりと面白い構成になったので制作記的にのこしておくことにしました。

Android Open Textbookプロジェクト milestone1 「出かけよう、Android!」リリースのお知らせ

かねてから取り組んできたオープンソース本「Android OpenTextbook」プロジェクトの最初のマイルストーンができました。今回はその紹介です。

記事の最後にPDFダウンロード先(無償)と書籍版(同人誌の頒布)の案内があります。興味があれば是非、読んでみてください。

Android OpenTextbook(AOTB)の概要

Android OpenTextbook(AOTB)は、GitHubと書籍制作ツールRe:VIEWを利用して開発者が欲しい技術情報を集約する試みです(TechBooster.orgの該当記事)。

Android OSは公開以来、アップデートが繰り返されてきました。Google I/O 2014で発表されたAndroid "L"のように常に新しい技術を取り込んで進化しています。

個人的にはOSの進化をワクワクしてみてます。それはAndroidのみならず未知の分野、技術に触れる楽しみがあるからですが、このあたりは、このブログに興味を持ってくれたエンジニアのみなさんはわかってもらえそうな気がしています:)

一方、新規参入するアプリ開発者としては嬉しい事ばかりではありません。参入者が覚えることは思いの外、多くなっています(こういう傾向は、何もAndroidに限った話ではないんだけども…)。

Android OpenTextbookでは、Androidアプリ開発を始めるにあたり必要な情報をオープンソース化して教科書として運用することで、常に最新の情報にアップデートをかけていこう、という試みです。そしてこの数か月の成果として最初のマイルストーン、AOTB m1ができあがりました(m1は、milestone 1の意味です)。

AOTBプロジェクトのかたち

次の図のような構成でAOTBプロジェクトは進んでいます。

赤い項目が、m1で対応した内容、赤枠に白背景の項目がm2(マイルストーン2、2014/12目標)にむけて進めている項目です。破線で囲まれた項目は、必要だと感じているが、現在着手できていないカテゴリです。

→の方向にスキルツリーが構成されており、ふつうに属しているカテゴリは、やさしいに属しているカテゴリを把握したうえで読んでほしい、という意図があります(が、そんなに厳密でもなく、分野ごとに凸凹している、目安みたいなものです)。

実際にこの内容を使って、Tech Instituteという早稲田大学さんで実施されているプログラミングスクールで利用していく予定です。プログラミング教材として運用していく中で、より良いものに改善したいです。

AOTB m1「出かけよう、Android!」の紹介とPDFの無償公開

無償版PDFのダウンロードはこちらから(入稿前版です。ところどころ校正が済んでないので、このあとの正式なリリースをお待ちください…)。

AOTB m1のメインターゲットは、開発初心者です。サブターゲットは中級者や他の分野からコンバートしてアプリ開発者になったひとが必要になった時に確認できるような副読本としての利用です。

中級者のひとであれば、上記PDFの3章センシングデバイスの項目を読んでみてください。非常に入り組んだAndroidのセンサー事情がわかりやすく書かれています。初心者のみなさんは1,2章のUIについてや、4章のネットワークプログラミングを読んでみてください。ネットワークの基本からAndroidでの使い方までとても丁寧に書かれています。

今回の「出かけよう、Android!」では、UIコンポーネントの入門やネットワークプログラミング、センサー、3Dグラフィックなど多くの分野をカバーしています。プログラミングを学ぶ際の副読本としてご利用ください。


紙の書籍の頒布についておしらせ

書籍としては、コミックマーケット86 3日目(8/17) 西か46b TechBoosterで頒布予定です。当日会場に来れないひとも多くいるとおもいますし、欲しいひと全員に届けたい、という気持ちがあり、事前予約サイトを用意しました。
デジタルでなく紙版が欲しい、という方は以下サイトよりご予約、またはコミケ当日の頒布で入手お願いします…!予約分は、一冊一冊、梱包してラベルを張って発送します…!

  • Booth.pm(予約販売サイトです)

また予約受付は入稿の関係で期間限定です。諸条件ありますので詳しくはサイトをご確認ください。今回は特にデジタル版を無償配布する(しかもコミケよりも先に)ので当日部数は、かなり少な目です。デジタルファースト、という初めての取り組みなので頒布部数が読めません。実際、予約状況をみて印刷部数を決めるので予約が集まれば集まるほど嬉しいです。

常に最新のPDFを入手できるようにCI環境を構築して、運用しています。

今回、AOTBプロジェクトでは、常に最新のビルドが提供できるようにCI環境を用意して運用してます。CIサーバから常に最新のPDFを受け取ることができます(リリースを待たずに、アップデートに追従できます)。

現在は特に作っている最中のため、m1のあともすぐに章が追加されm1_r1が出る可能性が高いです(こういう変なところはAndroidを真似なくてもいいのですが、開発初期ということで安定しだすまで許してもらえると嬉しいです…)。

安定板(m1,m2)については個別にダウンロードリンクを用意しますが、最新版がほしいよ、という方はこちらのCIサーバからダウンロードしてください。

また、このCIサーバは大変便利なのですが、動作が不安定です。突然メンテがはいったり、不具合があったりするかもしれません。あらかじめ、ご了承ください。

どんなふうに動いてるの?

CI環境について、PyCon2014で(開発担当のあめだまが)講演します。

基本的には執筆者が便利だからCIサーバーを用意したのが始まりなのですが、モリモリと機能が増えていきました。Re:VIEW記法で書かれた原稿をコンパイルして確認用PDFをつくるところまで責務です。どんなふうに動いてるの?という部分に興味がある人は、是非。

フィードバックについて

最後に、お願いです。実際のところ、AOTB m1は文字通り、マイルストーン1で、完成ではない状況です。教科書として体系だった学びを提供するには、カテゴリごとの点を体系としてならべたり、足りないカテゴリを追加したりと次のミッションがみえてきています。もしコントリビュートを考えている方がいらっしゃれば以下のようなことをしてもらえると嬉しいです。

  • 誤字脱字、日本語としておかしな箇所を見つけたらPR( https://github.com/TechBooster/AndroidOpenTextbook )を送ってもらえると助かります(マージするだけだとすごく手間が省けます)。
  • この章ならかけるよという箇所があれば、是非、@mhidakaまでご連絡ください。
  • 文章の編集や紙面のレイアウトなど編集作業を手伝ってくれる人が居たら泣いて喜びます。
  • 新人さんに勧めてみて話のネタにしつつメインターゲットとなる人の感想を教えてください。
  • 紙版が欲しい人は積極的に購入いただけるとうれしいです(配布部数によってはm2でのリリースはデジタルだけにするかもしれないので)。

品質についても「Effective Android」やその他書籍制作で培った技術をフル活用していますが、中々、手が足りていない現状です。書籍、EPUBとしてのレイアウトや編集などでも手伝ってくれるひとがいると、すごくうれしいです。